2024/6/13                                                                                                    NO 8

 

 2022年 3月22日

 騒乱2 嘘の始まり

 

 ■嘘の社会

 今や正直、つまり嘘をつかないということを、特に美徳と認識することは少なくなった。なぜなら、社会は上も下も嘘だらけ。政治家が嘘をつくのは当たり前。一流企業も会社ぐるみの嘘をつくのも珍しいことではない。そのような社会に育つ子供たちがその影響を受けないわけはなく、嘘がよくないということは分かっていても、それが自分のことに利害関係を及ぼす時、ためらいもなく嘘をつくようになった。世の価値観が嘘をつくことよりも、お金のほうにより高い価値を置くようになったからである。世で成功と認識されていること、例えば物質的に豊かになること、権力を握ること、これらのことが伴うなら、嘘も悪事も許されるような風潮が蔓延している。子供たちはそれを見て育っている。もはや「嘘も方便」を通り越している。そのような意味でこの世の体制はかつてないほど複雑な生き方を強いられている。ちなみに新聞記事にその幾つかを拾ってみた。

 

 ◇水道管塗料 試験片偽装か

  兵庫のメーカー 高湿乾燥/水洗浄(朝日新聞 2022  1月30日)

 ◇ロシアで多くの人が見ている夜9時のニュース番組、その機会を捉え、身を賭して

  訴えようと彼女は考えたのであろう。国営テレビの放送中に掲げた紙には、短く強 

  い言葉があった。「戦争反対。プロパガンダを信じないで。ここではあなたにウソ

  をついている。テレビ局の彼女は警察に連行された。(朝日新聞 天声人語 2022 

       3月17日)

   ◇「制圧するためのうそ」(朝日新聞 2022年3月20日)

 ◇NHK 「字幕は誤り」 6人懲戒処分(朝日新聞 2022年2月11日)

 ◇薬物陽性 出場認める 

  ワリエワ 仲裁裁判所 「15歳」考慮(朝日新聞 2022年2月15日)

 ◇「『人口 1億2千万人』も嘘かも」(朝日新聞 2022年2月28日)

 ◇ロシア、報道統制を強化 「偽情報の拡散」に刑罰 (朝日新聞2022年3月6日)

 ◇ロシアの戦争 報道弾圧を中止せよ

  新聞やテレビが国家の報道機関に成り下がっていたソ連時代に戻すつもりか。ロシ

  アで報道統制を強める法律が成立した。軍事をめぐる報道や発信の内容を当局が虚

  偽と判断すれば、記者らに最大15年の禁固刑を科すという。戦争批判を封じる言論

  弾圧であり、断じて容認できない。プーチン政権は即刻統制を止め、内外の記者の

  安全と自由を保障するよう厳重に求める。

   そもそも侵攻をめぐって事実を曲げてきたのは、プーチン政権だ。国内メディア     

  に、「攻撃」「侵攻」などの表現を禁じ、国連では「原発に放火したのは、ウクラ

  イナの工作員だ」と強弁し、批判を浴びている。

   今後は、こうした公式見解に疑義を呈する報道は、「フィクニュス」(偽情報)だ

  として犯罪にされる恐れがある。

   政権に批判的なメディアは相次いで閉鎖し、これまでに報じられた記事も削除

  された。外国人も対象となる可能性があるため、朝日新聞を含む多くのの国外メ

  ディアが、ロシアからの報道を中断している。かってなかった異常事態だ。

   自由な言論は民主主義の根幹であり、国民の権力監視には独立した報道機関が

  不可欠だ。政権が人々に目隠しをし、都合のよい話だけをささやくような社会は暗 

  黒以外の何物でもない。

   かつてソ連時代、ゴルバチョフ氏の情報公開で、国内の民族問題やアフガニスタ  

  ンなどをめぐる隠された真実が暴露され、体制が揺れた。

   当時を経験し、ソ連崩壊を悲劇と呼ぶプーチン氏は事実の力を恐れているのだろ 

  う。この国では近年、政権を批判する報道関係者の暗殺が続いてきた。

   今回の開戦後も、ロシア軍はウクライナ国内で英テレビ局の取材を襲った。首都

  エフにあるテレビ塔を襲ったのも、情報の電波を断つ狙いだろう。正当化できない

  戦争を正当化できない戦争を自覚している証左でもある。世界ではフェイクを規制

  する法律をつくる国が増えている。デモを防ぐ目的に応じて、政権が都合の悪い事 

  実を隠そうとする例も後を絶たない。米国では前大統領がコロナの脅威を軽んじる

  言論を流し、多くの犠牲者を生んだ。

   内外の市民に甚大な被害を及ぼす失政を隠し、独りよがりの歴史観を垂れ流して

  時代のナショナリズムをあおる。そんな独裁的な政治の蔓延を国際社会は食い止め

  ねばならない。

   日本でも先の大戦時、朝日新聞を含む各報道機関が大本営発表を流し続け、破滅 

  的な敗戦を招いた。ロシアの現状を同時代の教訓とし、公正な事実を伝える使命の

  遂行を誓う。(朝日新聞 社説 2022年3月7日)

 

 これらの記事は、たまたま最近の新聞に見つけたほんの一部に過ぎない。企業の嘘、報道の嘘、政府の嘘、戦争の嘘、アスリートたちの嘘、科学者たちの嘘、そして全人類の命に係わる原発変圧器の嘘に至るまで、見聞きする周辺を見渡せば、嘘ばかり。私たちは嘘の網に囲われている。

 社説にもあったように、一人の権力者が嘘をつくとき、その影響は計り知れない。みなが傷ついて苦しみ、時には捕縛されて人生を狂わされ、しばしば命までも奪われる。戦時中の日本でもあったことである。ロシアの場合、問題はもっと複雑だ。真実を語る者が嘘つきにされ、嘘をついている者が正しいとされ、それが政権などの権力者に対するものである場合には命がけのことになる。権力者の気分を損ねた者などは、闇から闇に家族共々命が葬り去られることもしばしばだ。真実を語るならそれがフェイクだとされる体制にどんな希望があるだろう。人権を奪われた社会ほど恐ろしいものはない。ウクライナで起きている残虐な映像を見るたびに胸がえぐられるように思う。死体が町中にごろごろと転がされていても、その映像は捏造であり、ウクライナの自作自演であると言い切る。学校や劇場がミサイルで攻撃を受け、多くの子供たちが犠牲になっていても、攻撃前の写真を出して攻撃していないという。国家まるごとフェイク、プロパガンダの世界でどのように生きていけばよいのだろう。

 人間はみな良心を賦与されて生まれてくる。にもかかわらずそれを捨てて生きろという。それが悪でなくて何であろうか。しかしそれが今、私たちが住んでいる世界である。天の言葉はいう。

 「律法をもたない異国の人々も、律法にある事柄を生まれつき行えます。律法をもっ  

 ていませんが、自分自身が律法のようなものです。彼らこそ、律法の内容が心に書か

 れていることを証明しています。彼らの良心が彼らと共に語り、彼らは自分の考えに

 よって非難されたり、弁護されたりしているのです。私が広めている良い知らせによ  

 れば、神がキリスト・イエスを通して人々の隠し事を裁く日に、こうしたことがはっ 

 きりします。」(ローマ 2:14、15 新世界訳)

 そもそも律法は、古代イスラエルの民のみに与えられた神からの贈り物であったが、しかしその律法はイスラエルの民以外の異邦人にも与えられていた。良心である。しかし良心の度合いは各自によって異なり、良心を無視する人もいる。したがって良心を働かせるか否かは全くその人に依存している。天の言葉はいう。

 「善い人は、良いものを入れた心の蔵から良いものを出し、悪い人は、悪いものを入

 れた蔵から悪いものを出す。人の口は心からあふれる出ることを語るのである。」

 (ルカ 6:45  新共同訳)

 そして人はみな日々、この生まれながらに賦与されている良心との闘いをしているが、その闘いに完全に敗れた時に「悪」を行う。しかし救いはある。神は、人間が生まれながらに弱く、悪に流されやすいことを知っておられ、このように記されているからだ。

 「神の憐みがあなたを悔い改めに導くことも知らないで、その豊かな慈愛と寛容と忍 

 耐とを軽んじるのですか。あなたは、かたくなで心を改めようとせず、神の怒りを自

 分のために蓄えています。この怒りは、神が正しい裁きを行われる怒りの日に現れる

 でしょう。神は各々の行いに従ってお報いになります。すなわた忍耐強く善を行い、

 栄光と誉れと不滅のものを求める者には、永遠の命をお与えになり、反抗心にから  

 れ、真理ではなく不義に従う者には、怒りと憤りをお示しになります。」(ローマ2:4-   

 8  新共同訳)

 それで、どんなに良心が弱くなっても、その人自身が強くしたいという意志をもって悔い改めたいと願うなら、神は救われる道を備えておられる。神は厳しく咎めだてをするような方ではなく、そう望むなら無限に許される方である。そのことは次の言葉にも表れている。

 「『さあ、来るがよい。わたしたちの間で事を正そう。』とエホバは言われる。 

 『たとえあなた方の罪が緋のようであっても、それはまさに雪のように白くさ

 れ、たとえ紅いの布のように赤くても、まさに羊毛のように白くなる。』」(イザヤ

 1:18 新世界訳)

 ゆえに、これら嘘で形作られているこの世界は、決して正常なものではなく、天の言葉が述べているように、それは悪魔サタンがつくった体制である。この体制はやがて覆されることになっている。